REPORT
子どもも大人も夢中に学んでしまう状況って、意図的に作れるのか?

Tomoaki Yamaguchi
2020/8/15

私は昨年の春からインターンをしているグッチです!
新しい学びの場づくりに関わりたいという気持ちからVIVITAに参加し、大学で学んだ電気の知識などを活かして、一年半ほど私自身も子どもと一緒に学びながら様々な企画に挑戦しています。
それでは、いきなりですがこのコラムを読んでいるあなたに質問です!!
子どもも大人も夢中で学んでしまう状況って、意図的に作れると思いますか?
それは、誰かに強制されるでもなく、自発的に好奇心が生まれ、その好奇心に向かって学んでしまうような状況です。
私は、難しいけれど、努力次第でその状況を作ることができるのではないかと考えています。なぜなら、意図しなくても夢中になる状況はたくさんあるし、他の人が夢中になっている姿もよく見かけるからです。それらの状況を考察しまくれば、なにか条件みたいなものが見えてくるんじゃないかと考えているからです!
*条件があってほしい!と期待してしまっているところもあります。(笑)
そして私は最近、ワークショップを通して、その『夢中で学んでしまう状況を作るための仮説』をどうにか立てることができました。
それを皆さんに共有できたらと思い、このコラムを書いています。
*もちろん仮説が立てられたのは、ワークショップに参加してくれた子ども達と他のVIVITAクルーのおかげです!
それでは、『夢中で学んでしまう状況って、意図的に作ることができるのか?』について書いていきたいと思います。
♦そもそも仮説を立てるきっかけとなったワークショップとは?
きっかけとなったのは、私が企画した【モノのしくみ探究部~グルーガン分解編~】というワークショップです。
このワークショップの目的は、『モノのしくみを見抜く視点を養うこと』です。視点を養って、仕組みを理解できるようになることで、よりいろんなモノを作れるようになることを目指します。
内容は、文字通り「モノの仕組みの探究」で、第一弾はグルーガンを扱いました。
ワークショップの流れはとてもシンプルで、
①中身を予想する。
②分解する。
③気になるところをみんなで共有したり、実験したりする
というものです。
詳しいワークショップの中身はこちらです↓
https://kashiwanoha.vivita.club/column/2337/
*読まなくてもこのコラムを読み進められるようにしています。
実際にワークショップをおこなってみるとは、子どもの好奇心が爆発し、時間内に終わりにできないほど夢中になり、考察や実験、新たな気づきが止まりませんでした!
*しかもこの状態は、大人だけでリハーサルしたときにも起こりました。
また、ワークショップ中に気づいた「モノの仕組み」をまとめることに興味を持ってくれた子どもがいて、現在『しくみ図鑑』を作成中です。
しかし実は、モノを分解するワークショップで、こんなに夢中で学んでしまう時間が持続したのは、今回が初めてなんです!
つまり、これまでは、夢中になる時間が限られた短い時間だけだったのです。
そもそも、以前はどのように分解ワークショップをおこなっていたかと言うと、分解することから始めて、分解して見つけたものについて色々考えてみよう、という流れでした。
そのとき扱ったモノは、パソコンや時計、ラジオ、懐中電灯、モニターで、きっとモノ自体は悪くありません。身近で見たり使ったりした経験があり、中身を理解できれば、次なにかを作るときに役に立ちそうです!
当時の私はそんな風に考えていて、まさに学びを提供する気持ちでいっぱいでした。
しかし実際は、分解している時だけ盛り上がって、分解した後に夢中になって、気づいたことをシェアしたり、実験したりすることはなかなか起きませんでした。
つまり、ただの分解アクティビティワークショップになっていたのです。
*一部の、元から電気工作に興味があった子どもだけは、分解した後も興味を持ち続けていましたが、それはワークショップに効果があったとは言えないと考えています。
私は、なぜこんなに差がでたのかと、自分でも正直驚きました。
ただ、どちらも分解を軸にワークショップをおこなっており、夢中で学んでしまうかどうかの差は、『ワークショップの流れ』で決まっているのではないか?という仮説を立てることができました。
その仮説をもとに考えると、今までの分解ワークショップになくて、今回の「モノのしくみ探究部ワークショップ」にある流れは『予想』です。この『予想』に、夢中になって学んでしまうヒントがあるのではないかと考えました。
そのため、この『予想』にヒントがあることを前提に、『夢中になってしまう条件』とはなにかを考えました。
そこで比較のために、ほとんどの人が経験しているであろう「テレビドラマに夢中になる」を例に『夢中になってしまう条件』を考えてみました。
♦「テレビドラマに夢中になってしまう条件」って何だろう??
きっとこのコラムを読んでいる皆さんも、テレビドラマに限らず、連載中の漫画やアニメを観ているときに、「夢中になる」という経験をしたことがあると思います。
しかも、特に面白いわけではないのに続きが気になって、見続けてしまうことってありませんか?『なんでこんなに時間を使ってしまったんだ!』というような。
私は、先程記載した『予想』をもとに、テレビドラマに夢中になってしまう条件を探しました。
そして、どうにか「これなのではないか」というものが見つかりました!
それは、
『60点くらいの予想』と『人前で予想が外れること』
です。
きっとすぐにはピンと来ないと思いますので、一つずつ説明させてください!!
まずは『60点くらいの予想』について。
例として、テレビドラマを観ているときについて考えます。
このとき『60点くらいの予想』とは、
・刑事ドラマだったら、犯人の候補を3人ほど予想している状態
・恋愛ドラマだったら、男性の主人公がこの先ヒロインと上手くいくために、「あれをしたら良いかもなぁ」とか「もしかしてあんな展開になるのかも」を3つほど予想している状態
・スポーツドラマだったら、試合を見て、「こうやって勝つのかもしれない」とかを3つほど予想している状態
つまり、「こうなるかもなぁ」というパターンを3つほど考えるが、それが当たる自信が少しある程度の予想です。
私は、この『60点くらいの予想』をした状態を『夢中になってしまう』ための導線に火がついている状態と考えています。
このようなに例えた理由としては、私の場合、その状態になったら、もう続きを見るのをやめる決断が基本的にできないからです。
おそらく皆さんも、この状態になってしまったら、そのドラマの結果が出るまで、見るのをやめることはできないんじゃないかと思います。
*少なくとも私は、ドラマを見ている時にその状態になってしまったら、CMは待ちきれなくなってしまいますし、お手洗いをどうにか我慢してしまいます・・・。
そして、『人前で予想が外れること』について。
『人前で予想が外れること』によって、人は下記のような ””衝動”” に駆られると思います。
・「どの予想が当たっているのかを探してしまう」
例:この犯人はあのシーンのあの行動を見たから当てられたんだな。
・「惜しいものでもほぼ正解としたくなってしまう」
例:あのまぎらわしいシーンのせいで、こっちが犯人がと思ってしまったけど、まぁこっちも犯人の候補だったから当たったかな。
・「外れたところは、言い訳したくなってしまう」
例:いやー、これは犯人を見抜くにはヒントが少なすぎる!
・「外れてるところを棚にあげて、当たっているところをアピールしたくなってしまう」
例:ダイイングメッセージは何も理解してなかったけど、とりあえずあの人が犯人だったのは当たった!!
このような “”衝動”” に駆られてしまう理由は、『60点くらいの予想』は今までの情報を踏まえ、それなりに時間かけて考えているため、外れた場合、それまでに注いだ時間をムダにしないために ”意味” を見出そうとしてしまうから、と考えています。
テレビドラマを見ている時を思い出していただききたいのですが、それなりに予想に時間をかけてしまったときに、人前で予想が外れてしまったときこそ、上記のような“”衝動”” に駆られてしまいませんか?
*ちなみに私は、言い訳しまくるような“”衝動”” に駆られてしまいます。(笑)
さらには恥ずかしながら、作者の脚本より良い展開を探したくなったりします。私みたいな素人がそんなことができるはずがないんですが、どうしても注いだ時間をムダにしたくない衝動に駆られてしまいます。
そして、これは周りに人がいることによって、連鎖反応すると考えています。
周りに人がいれば、自分だけが当てた予想や自分だけ外れてしまった予想が明らかになります。こうなると人は、自分が当てたことがすごくうれしくなって解説してしまったり、さらに外れた部分については言い訳したくなると思います。
これによって、新たな視点が共有され、新たな発見や疑問点が出てきて、より細かい部分において当たっていたのか外れていたのかを話し合ったりしてしまうことでしょう。
そして、最初と同じように解説したり、言い訳したりしてしまうことが予想されます。
そうこうしているうちにまた、新たな視点が共有され、新たな発見や疑問点が出てきて、より細かい部分において当たっていたのか外れていたのかを話し合ってしまう状態になってしまうのです。
ドラマを例に話を進めていましたが・・・、
「夢中で学んでいる状態」とも言えるのではないでしょうか??
おそらく、このようにドラマを見た人たちは、広い知識と深い考察をもって、このドラマのことを他の人に話せるようになっていると思います。それは『60点くらいの予想』と『人前で予想が外れること』により、他の人と細かい部分まで深く議論してしまったからだと思います。
今回の「モノのしくみ探究部~グルーガン分解編~」で起きた現象は、まさにこれでした。
①中身を予想する。
②分解する。
③気になるところをみんなで共有したり、実験したりする
というワークショップの流れは、偶然にもテレビドラマのストーリーに近かったのです。
『60点くらいの予想』と『人前で予想が外れること』を今回のワークショップにあてはめてみましょう。、
・『60点くらいの予想』
参加者はグルーガンを扱ったことはあるが、中の構造を見たことはないので、大人も子どももみんな『60点くらいの予想』をすることとなった。
・『人前で予想が外れること』
大人も子どももグルーガンを分解して見たことはなかったので、全員が時間をかけて予想したにもかかわらず、『人前で予想が外れる』ことになった。
きっとこのことが、偶然にも「モノのしくみ探究部~グルーガン分解編~」で大人も子どもも夢中になる要因になったのではないかと考えています。
♦結論
【大人も子どもも夢中で学び続けてしまう状況って、作れるのか?】
という問いに対する私なりの答えは、
【『60点くらいの予想』を参加者にしてもらい、『人前で予想が外れること』の流れを踏むことで、作れるかもしれない!】
です。
ただ、「モノのしくみ探究部」は一度しか開催していないので、まだまだ考える余地があり、あくまで仮説です。
そのため、次のワークショップにおいてもこの流れを作ることにチャレンジして、実際にこの仮説を検証していきたいと考えています。
♦さいごに
このコラムを読んでいる皆さんは、どのように感じましたか?
「なるほど!」と思った人もいれば、「私はもっと違う考えがある」「予想することがどんな影響があるかなんてそもそも考えたことがなかった」「正直、その仮説には共感できない」など、いろいろな意見があると思います。
もちろん、私は心理学や教育を大学で専門に学んだことがないので、考え方に不備や不足があると思います。
ただ、この
【大人も子どもも夢中に学び続けてしまう状況って、作ることができるのか?】
という問いに向き合ったことは、有意義だと思っています。
もし、皆さんが
私と同じようにこの【大人も子どもも夢中に学び続けてしまう状況って、作ることができるのか?】に向き合ってくれたのなら、私がこのコラムを書いた目的は果たされ、とても大きな喜びです。
それでは、
最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
*また気づきがあったら文章を書く予定です。また、次のコラムでお会いしましょう!
*そして、『モノのしくみ探究部~グルーガン分解編~』に協力してくださったももこさん、ごうさん、やなー、そして申し込んでくれた子どもや参加してくれた子どものみなさん、ありがとうございました!この場を借りて感謝を伝えさせていただきます。


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